『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』【ネタバレ感想・解説】終焉のその先へカメラを向けよう!

ゾンビ映画

今回は映画『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』についてご紹介します。

監督はゾンビ映画の第一人者ジョージ・A・ロメロ。2017年に惜しくも亡くなってしまいましたが、彼の最後の作品である『サバイバル・オブ・ザ・デッド』の一つ前の作品がこの本作品なんですよね。しかも『サバイバル・オブ・ザ・デッド』は本作品の続編となってます。

ロメロはキャリアの最後に向けてどんな映画、どんなメッセージを残すのか、個人的に気になったのでしっかりチェックしていきたいと思います。

本記事は作品のネタバレになるような内容を含む解説・考察記事です。

作品を未鑑賞の方はお気をつけください。

映画の情報

監督
ジョージ・A・ロメロ

脚本
ジョージ・A・ロメロ

出演
ミシェル・モーガンジョシュ・クローズショーン・ロバーツ、他

原題
Diary of the Dead

2007年制作/95分/アメリカ

あらすじ

ドキュメンタリー監督志望のジェイソンジョシュア・クローズ)ら映画学科の大学生たちは、ペンシルベニアの夜の山の中で卒業制作のホラー映画を撮影していた。

そこに、世界各地で死者が蘇っているという、衝撃的なニュースが流れてくる。

撮影を切り上げ、急きょ寮へと駆けつける。そして恋人デブラミシェル・モーガン)を無事に発見したジェイソンは、全てをカメラに収めようと決意。

仲間たちとキャンピングカーで一路家路を目指すが、一人、また一人と仲間たちは犠牲になって行く。。。

感想・解説

この映画のまずひとつの売りはフェイクドキュメンタリー的に話が進むってところです。映画撮影中の学生の一人が、ゾンビ発生時からカメラを回し、その記録されて編集された映像がこの映画っていう設定。

だから凄くリアルな、例えるならバイオハザードのゲーム画面みたいな臨場感があるんです。

が!、不思議なことに、臨場感はあるんだけれど緊張感が全くなくて、展開も、人の命も、大変軽い映画になっています。

ただ!、(何回もすみません)そんな軽さが爽やかでいいじゃない♪と言われたら確かにそうかも!となる。そんな映画。

自分はコーラ片手にサクッと楽しめましたよ。そこまで怖さもなかったですし。

初期三部作のデッドシリーズと比べちゃダメ

前作『ランド・オブ・ザ・デッド』で1600万ドルを投入した後の反動か、今回の製作費はおよそ200万ドルに。撮影はデジタルカメラの為、ペラペラした安い映像になっています。

出演者も基本的にあまり有名な人は出ていないので、いい意味で映画に集中できると思います。あくまでインディーズ映画として見たら面白いです。あのロメロが撮ったと、そんな風に思わなければですが。

主人公が頑なにカメラを離さない姿勢に、賛否両論あるようです。

カメラを離さず仲間を助けない、そんな不自然な態度がこの映画の可能性を潰してる気もするけど、そもそもこの主人公が頑張って撮影してなければこの映画事態もなかった事になるなという、どうしようもない設定に、まあ、そこはしゃーないわなー、とロメロと誕生日が一緒の僕は思う次第です。

ロメロの辛辣に見えて軽いメッセージ

主人公たちは、世界各地で死者が蘇っているという、衝撃的なニュースを見て恐怖に陥るわけですが、いろいろあって翌日の夜にまたニュースを見ると、ニュースが国によって改変させられていました。死者が蘇っているのではなく、一連の騒ぎは全部不法移民が暴れているだけだと、警察署長のおじさんがテレビで演説する姿が差し込まれています。前日にはそんな映像はなかったのに。

メディアの言うことなんか簡単に信用してはいけないよ。というメッセージも含まれているとは思いますが、注目すべきはこの警察署長役がどういうわけかロメロ本人だという事。何かのギャグや皮肉にも取れますね。

メディアは平気で嘘をつく。だから信じるな。そしてそれは俺も。そして、お前もだ!なんて事を言っているように思いました。もちろんここまで強いメッセージでは全然ないのですが。

辛辣なメッセージがどこか軽々しく感られますが、ロメロ本人が出演することで、うまいことギャグのレベルに昇華し、批判的な意見をかわすことができているのだと思います。

ただ、そもそもロメロ本人が出てると誰が気づくことができるでしょうか?

他にも「放送局は崩壊し、今生きた情報を伝えるのはブロガー。ハッカー。子供だ。」なんて社会派なメッセージもあったりなんかします。you tubeやSNSが定着し始めゾンビ映画と絡みだした、最初期の映画なのかもしれないですね。

ロメロの個性

街にゾンビが現れたとニュースでの発表から一日が経ち、翌朝になると街の状況は一変していた。暴動、略奪が起こり、首吊り死体が橋からぶら下がっていたり、ラジオからはなぜか、悲観的な台詞を叫んでいる音声が。

たった1日後にしては展開がかなり強引!と思ったけど、ロメロにとっては世界が終わる事など躊躇なく、大した説明もしない事はどうだっていいように見えます。

ある意味表現したい人や、何か挑戦したい人は学ぶべき姿勢かもしれませんね。今のハイクオリティーな映画に少しついていけなかったので、そんな感想を抱きました。とにかく、街が少しやりすぎな程に壊滅状態に陥っています。

息子がゾンビになってしまった為、そのゾンビを殺さずにかくまう老夫婦が出てくるシーンがあるのだが、ゾンビ殲滅のため武装した集団に胸を撃たれて殺されてしまう。悲鳴をあげ、悲しむ老夫婦、日本の漫画やドラマではもう少し引き延ばすであろうシーンだが、ここらへんの容赦のなさ、短さからくるある種の軽さ、ある意味楽観性すら感じる悲惨な映像はロメロの最高の個性でしょう。

ゾンビ映画の終着点とは

「カメラを撮ることで体験者から傍観者に、感覚は麻痺してきていた。惨劇に慣れ、日常になっていく」途中、そんなナレーションが入るが、主人公たちを取り巻く状況がどんどんひどいものになっていく中、映画をみている我々もそれに慣れていき、麻痺していく、全ての映画がそうだとは思いますが、ゾンビ映画に関しては、観客を楽しませるため、ひどい状況をどんどん作っていく必要性があるのだと思います。

さんざん逃げ回り仲間を失ったあげく、主人公たちは、軍人の格好をした生意気な男たちに出会います。そいつに不条理に銃を奪われ、こんな世界が永遠に続くような絶望が彼らを支配します。

この嫌な軍人の格好をした男が、次作となる『サバイバル・オブ・ザ・デッド』の主人公です。自分はまだ未見なのですが、ここだけは非常に強い興味があります。なぜ、彼なんだ?と。

生存者の友達の豪邸に避難し、ここが最後の舞台になります。惨劇はゾンビ映画の中では絶対にどんどん起きないといけない為、様々なグッとくる趣向がこの舞台には凝らされていました。

庭にはプールがあり死体が多数あり、友達の腕には噛まれた跡が。ここでもまぁ~いろんな惨劇が起こるのですが、監視カメラのいくつもの映像に視点は切り替わる演出がなされ、ここでも主観はなくなり、絶望が、日常へと変化して行きます。

ちなみに監視カメラの映像を編集することだけでできた映画、『クロニクル』やデジタルカメラの主観映像だけの『クローバー・フィールド』なんかの映画を思い出しました。

この後、撮影者の男もゾンビに噛まれ、彼女に頭を撃ち抜かれてしまう。

いろんな意味で憎いのが、撮影者の彼が死んだ直後に、彼の生前のドキュメンタリー作りへの思いを一人語りした主観映像が差し込まれるところです。

彼が亡くなり、彼女が彼の思いを継いで撮影を終わらせてこの映画を作ったのは彼女だったとわかるわけですが、映画の編集も彼女がやっていると思うと、少し設定に無理を感じつつも、涙ぐましいものがあります。

あの監視カメラの映像をうまく切り取ってエンターテイメント的に繋いでるシーンも彼女が編集したなんて、無理を感じてしまいました。

ゾンビ映画のマナーとは

彼女と残された仲間たちは豪邸に備え付けのパニックルームに逃げ込み、完全に遮断された世界で、動画をネットで見つける。これが最後にダウンロードした映像と言っていた。

男二人がゾンビを木にくくりつけ、楽しそうに銃で撃ち殺す映像だ。それを見て彼女はいう。「私たち人類に救う価値などあるのだろうか。」と。

救う価値などない。この映像からわかる感情はそれだけになってしまっている。あまりにも子供っぽい終わりだったと思ったのですが、ゾンビ映画というジャンルの性質上、これもありなのだと思いました。ラストのメッセージはロメロが伝えたいものなどではなく、例えるなら漫才のラストにおける「もうええわ。」と同じような、とってつけたようなものなのだと思います。

僕が少し思ったのは、前述したようにゾンビ映画に関しては、観客を楽しませるため、ひどい状況をどんどん作っていく必要性があるので、ここを楽しんでもらうところに重きを置いているので、男二人がゾンビを木にくくりつけ、楽しそうに銃で撃ち殺す映像を見せたかっただけなので、ラストのセリフはあまり意味はないのだと思いました。

彼女たちはパニックルームに閉じ込められたまま映画は終わるが、この先が見たい。希望は残さず終わる。ラストにあまり余韻は残さない。これが、ゾンビ映画のマナーだろうか?それともロメロの生きた時代性によるものなのか。

続く『サバイバル・オブ・ザ・デッド』で見届けようと思います。


タランティーノ、サイモン・ペッグ、ギレルモ・デル・トロ、出てます

こんなビッグな情報、最後に言うことではないかもしれませんが。。

なぜ、最後にこんな情報を言ったかと言うと、あまりにもしょうもないからです。僕もネットで調べて初めて知ったのですが、差し込まれたニュース映像の音声をそれぞれが担当してるとの事。これはよっぽどの友達じゃなきゃわかりません。

小話としてはアリですが、判別不可能なレベルです。これが調べてみると、当時の映画紹介文に結構大きめに紹介されてました。しかもタランティーノ出演、あなたは見つけられるか?是非劇場へ!てな感じで。お客さんかわいそう。。

最後に

なんだかんだで自分は面白く見れました。人にはあまり紹介はできないですが。。。紹介するなら『28週後…』ですかね。

頭を使わずに状況や設定を追いたいのならこの映画はいいかも知れません。

 

 

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